山崎 龍一 先生
更新日:2019/07/01
山崎龍一医師=東北大学医学部卒業=は、東北大学病院で初期研修、国立精神・神経医療研究センター病院で後期研修を終え、2018年度(平成30年度)に、東京慈恵会医科大学(以下、慈恵医大)大学院に入学しました。同時に精神医学講座に入局して、病棟でレジデントを指導しながら、患者さんの治療に当たっています。
なぜ慈恵の精神科医局を選んだのですか。
「もともと学生時代から、脳の研究をしたいという思いがありました。
学生実習や初期研修で精神科の治療にかかわっていくうちに、脳と精神医学の関連を知り、精神科医として直接患者さんの利益につながる研究をしたいと考えるようになったのです。
前職の国立精神・神経医療研究センター病院でTMS(経頭蓋磁気刺激療法)に出会い、慈恵医大ではTMSをはじめとして幅広く臨床研究を実施していることを知り、見学会にでかけて話を聞きました。
短い見学中でも、親身になって質問に丁寧に答えてくださり、ここだったらやっていけると思い、入局を決めました」
脳科学にも興味があったと聞きましたが、精神科を選ばれた理由は?
「大学3年生のときに、機能的MRIを使った顔認識に関する研究に携わる機会があり、その際に精神科や心理学を専門とする先生に指導してもらったのが、興味を持ったきっかけです。
また実習や研修で実際の治療場面を見る中で、精神科は治る患者さんも多い診療科だと感じました。治療がうまくいけば、短期間でよくなる場合も少なくありません。私が経験した中で特に驚いたのは、ECT(電気けいれん療法)です。重症のうつのかたで、ご飯が食べられない、言葉もあまり出てこない、動くこともできなかった患者さんが、1か月くらいでピンピンして、ご飯も食べられるようになって家に帰られました。
そういう様子を目撃するうちに、もちろん薬物療法なども有効な治療ではありますが、脳を刺激して治療することにも、未来があるのではないかと感じ、それが現在の研究テーマにもつながっています。
精神科においては精神療法もとても重要な治療です。一定の理論や技法はありますが、多種多様な患者さんの問題に、それらをどう適用していくか。またどのように患者さんの気持ちに寄り添っていくか。こういった部分は、精神科としての力量が試され、やりがいがあると思いました。科学的な部分と人間的な部分が複雑に絡み合っている精神医学に興味を持ち、精神科医として働くことを決めました」
実際に入局してみて、いかがでしたか。
「いい意味で、最初の印象と変わりません。アットホームで、垣根が低くフランクに話せるところが、この医局の魅力だと思います。
私にとって、病棟でレジデントを半年間にわたって1対1で指導するのは初めての体験でした。最初はどのように指導したらいいのか悩み、右往左往しました。今でも試行錯誤を重ねながらやっています。
しかし指導方法に限らず、困ったときはいつでも質問できる環境だったので、辛く感じることはありませんでした。医局の先生がたは、忙しいときも嫌な顔をせずに丁寧に教えてくださいます。温和な先生ばかりで、カンファレンスでも、とても教育的な対応をしていただいています。
上の先生がたがよくしてくださる分、私も後輩の先生に丁寧に指導していきたいと思います。
慈恵医大の先生は、さまざまな分野の専門の先生がいらっしゃるので、幅広く、そして深く指導受けることができます。縦のつながりも、横のつながりもある医局で勉強でき、アフター5も充実していて、飲みながら話す機会も多いです。その良い風潮を、自分も継承出来たらいいですね」
大学院との両立はいかがでしょうか。
私の研究はもともとTMSの臨床応用がテーマなので、診療に携わりながら研究することのメリットは大きいと感じています。診療場面の中で浮かんできた疑問を臨床研究に落とし込むことで、診療に役立つ知見が得られる研究をしたいと考えています。
確かに臨床をしながら、同時に研究を進めるというのは大変ですが、今はあまり苦に思うことはありません。なぜなら、みなさんがとても協力的で、大学院生であることを配慮してくれるからです。とても働きやすい職場です。
大学院の授業は、午後6時以降や土曜日にまとめてあったりするので、臨床と研究を十分、両立できます」
大学院以外でも勉強していると聞きましたが。
「昨年はハーバード大学のオンライン講義を、1週間に1度受けていました。論文を批判的に読む方法や臨床研究の組み立て方、その際に何に気を付ければいいのか、などを学びました。
慈恵医大は立地が良いので、外部の勉強会に参加しやすいのも魅力の1つです。臨床で指導を仰ぎ、大学院で学び、外部の講義も受ける。どれも良い刺激になっています」
将来、どんな医師になっていたいですか。
「精神科に限らず、医学一般では『アート』の部分と『サイエンス』の部分があると言います。それらをバランスよく身に着けた医師になることが目標です。
患者さんに対してエビデンス(根拠)に基づく最善の治療を提供するためには、臨床研究の知識は必須です。また新たなエビデンスを作り、少しでも医学を前に進めることも重要です。
しかしこれら『サイエンス』の部分を機械的に適用するだけでは、精神科では通用しません。異なる背景を持った患者さん一人一人に向き合っていく『アート』の部分の能力が強く求められていると感じます。これから診療と研究を両立させていく中で、先輩がたの背中を追いかけ、少しずつ身に着けていきたいと思っています。
近年、精神科の需要は増え、今後もその傾向は続くと考えられます。しかし精神医学にはまだわかっていないことも多く、医療ニーズとは大きなギャップがあると言わざるを得ません。このギャップを埋めるために、ほんの少しでも自分の研究が役に立てば、この上ない喜びです。
研究も臨床も学べる慈恵医大で、みなさんと一緒に働くことを楽しみにしています」
山崎医師の1週間
午前 | 午後 | |
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水曜日 | 病棟業務* | 病棟業務* |
木曜日 | 病棟業務* | 病棟業務* |
金曜日 | 病棟業務* | 外勤 |
土曜日 | 講義など | – |
*臨床研究のため、病棟業務と並行してデータ取得を行います。
(大学院では勤務後や、土曜日などにまとめて講義があります。)